過失事故における免責を考える

摘要

事故の発生にはヒューマンエラーが 80%程度関与しているといわれており、ほぼ全てが過失事故と言える．現在の日本の刑法には過失罪が存在し、これらの事故は原則的には処罰対象となってしまう．2001 年に発生した駿河湾上空での日航機のニアミス事故においては管制官の有罪が最高裁で確定してしまっている［1］．ヒューマンエラーを起こしてしまった当事者を処罰しても事故の再発防止にとって有効であるとは言えない．当事者の口を通じて、この事故の背後の状況に関する説明を得て、事故の真の原因を見出し、それに対する対策を講じることが強く望まれる．しかしながら、当事者が事故に至った経過を詳細に述べることは、時として自己に不利益をもたらす場合もあり、当事者が口をつむぎ、事故の真の原因を探るための有効な証言が得にくい状況になっている．