高応力比·低繰返し速度下における水素ガス蓄圧器用SCM435 鋼の疲労き裂進展特性に及ぼす水素の影響

摘要

最大40 MPa の高圧水素を貯蔵する水素ステーション用蓄圧器の候補材料としてSCM435 鋼の適用が進められている．蓄圧器を安全に長期間使用するためには，実際の使用条件を踏まえたSCM435 鋼の強度特性に及ぼす水素の影響を明確にしなければならない．蓄圧器は4 種の圧力サイクル（高圧バンク40 MPa<=>35 MPa：応力比R = 0.875 相当，中圧バンク40 MPa<=>30 MPa：R = 0.75 相当，低圧バンク40 MPa<=>20 MPa：R = 0.5 相当，但しメンテナンス時40 MPa<=>0 MPa：R = 0 相当）で運転される．高圧，中圧，低圧バンクの1 日の使用回数を，約100 サイクルと仮定すると，繰返し速度f = 0.001 Hz 相当である．田中らは， R = -1，f = 0.02～20 Hz のもとでSCM435 鋼の疲労試験を行い，f が低いほど，水素によって疲労き裂進展速度da/dN は加速するが，水素によるda/dN の加速には上限値が存在することを明らかにした．水素チャージ材のda/dN の上限値は，未チャージ材のda/dN の約30 倍である．本研究では，実際の蓄圧器の使用条件に近い応力比R = 0.4，繰返し速度f = 0.2 ～ 2 Hz のもとにおいてSCM435 鋼の水素による疲労き裂進展の加速を調べる．