食事支援装置のためのスプーンによる掬い動作における食品の力学的特性に関する研究

摘要

国際障害者年である1981年以降，障害の有無で区別を受けることなく，障碍者と健常者が共に生活を送ることを当然とする社会理念「ノーマライゼーション」が普及した．これを機に，福祉の在り方は弱者保護から自立支援へと大きな変化を遂げ，障碍者自身にも日常生活動作を可能な限り独力で行うことに対する意欲が高まった．また，近年では福祉現場における介護職員の不足が問題視されており，介護労働における身体的負担の軽減を目的とした機器の導入に期待が寄せられている．これらの背景から，現在では障碍者側と介護者側の両方の立場から「支援機器」に対する需要は増加している．障碍者にとっての支援機器の存在意義は特に高く，これまで独力では不可能であった動作が支援機器の使用により可能となることから，自立した生活を送れることに対して自信が生まれ，自己の尊厳の遵守に繋がる．