高温水中ステンレス鋼皮膜成長解析とSCC試験における定荷重法とSSRT法の比較

摘要

高温水中におけるステンレス鋼および高合金鋼のSCCについての事例解析もすすみ，SCC進展速度のデータベースも整ってきている．またSCCの発生と進展についての研究も大きく進展してきている．私は，1970年代当初にステンレス鋼のSCCに関心を持ち，SCC機構の基礎的理解を志して，急速ひずみ電極法による表面皮膜成長を行ってきた．当初は実験の容易な常圧系において，ステンレス鋼の新生面溶解速度と皮膜生成過程の解析を行ってきた．高温水中におけるFe，Ni，Fe-Cr，Ni-Cr，Fe-Cr-Niの皮膜成長解析への急速ひずみ電極法の適用は，1981-1986年に当時大学院生だった藤本慎司現大阪大学教授によってなされた．本稿ではその成果に基づいて，高温水中のステンレス鋼のSCC機構と関係付けながら，高温水中の皮膜形成について，その要点を述べる．