素材分野における腐食促進試験法の現状と課題 - 鉄鋼材料

摘要

ライフサイクルコスト、環境保全の観点から、自動車では12年防錆性能、建材では100年オーダーの耐用年数を有する腐食に強い鉄鋼材料が求められている。それらをできる限り早期に開発し供給することが鉄鋼メーカーの使命である。高耐食材料の開発においては耐食性向上及び耐用年数の向上が目標のひとつである。開発にフィードバックさせるため、実際の使用環境における耐食性評価が重要であるが、実環境である大気環境は千変万化、種々多様であり、高耐食材料ゆえ膨大な試験時間を要する。また、予期せぬ腐食因子の到来により、異常な腐食を起こすこともある。そのため、通常、腐食因子をコントロールした何らかの腐食促進試験を利用して、材料開発が行われている。ところが、試験法の不適切な選択により、不適切な材料を開発してしまう可能性が指摘されたことから、耐食性をより正確に再現しうる試験法が求められている。また近年では材料の耐用年数（寿命）の予測に関するニーズが強くなっている。以上のように、試験法の選択·適正化は材料開発にとって非常に重要な課題である。また、より適正化した試験法を開発し、公的に規格化しようという動きが活発化している。本稿では、自動車、家電及び建材用表面処理鋼板の大気腐食促進試験に関する従来検討を整理し、現状と今後の課題について論じたい。