鋼橋塗膜の寿命予測技術の現状と問題点

摘要

高度成長期から安定成長期に，さらには最近の低成長期に移行するにつれて，建設の時代から維持管理の時代に変わり，点検と寿命予測は社会的ニーズの高い技術となってきた．道路，鉄道，橋梁および港湾施設などの社会基盤施設を始め各種施設の寿命予測が可能となれば，管理者が維持管理計画を策定することが容易となり，関係者などにとっても維持管理技術開発の迅速化に役立つことが多くなる．寿命予測を行うには，寿命の定義を明確にしておく必要がある．一般に，施設の寿命は物理的寿命，機能的寿命，経済的寿命に分けられて議論される．塗膜の場合には，機能的寿命すなわち塗替えるべき時期に達したときが寿命といえる．それが鋼橋塗膜であれば，基本的には塗膜の防食機能が低下した時点で寿命といえる．しかし，鋼橋が都市内や景観を重視する位置に設置されている場合には，防食性が低下する以前に変退色，光沢低下，汚れなど美観上障害となるようならば塗替えられることもある．すなわち，鋼橋が設置された環境条件下において要求される塗膜特性の尺度によって，塗膜寿命の定義も異なってくる．