気候変動影響を背景に自動車等の運輸部門においては燃費向上が強く求められており,将来に向けて燃費に対する要求が各国で厳しくなっている.エンジンオイルでの省燃費化の有効な手段には低粘度化と摩擦調整剤(FM)の配合が挙げられる、エンジンではそのしゅう動部位ごとに潤滑状態が異なり,流体潤滑領域では低粘度化による油膜抵抗の低減,境界潤滑領域ではFMの適用による摩擦損失の低減により,エンジンオイルによる燃費向上が図られている.低粘度化を進めると必然的に新たな境界潤滑領域を呼び込むことになり,FMの役割がより重要となる.モリブデンジチオ カルバメート(MoDTC)は有機モリブデン系の摩擦調整剤である.MoDTCは比較的極性の高い化合物であり,金属表面へ吸着しやすく,摩擦による動的及び熱的なエネルギーにより分解し,摩擦面にせh断応力の小さい二硫化モリブデン被膜を形成する.しかし,MoDTCは金属表面に吸着することによって機能を発現するため,金属表面の腐食が懸念される. MoDTC添加油の高温腐食試験(HTCBT; High Temperature Corrosion Bench Test)では,MoDTCがHTCBTの結果に与える影響は評価油によって大きく異なることが報告されているが,その差が生じる要因に関しては明らかとされていない.本検討ではMoDTC添加油の高温腐食性に影響を及ぼすと予測したベースオイル,粘度指数向上剤(VII)及びジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)について,その影響を調査した.
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