ゴムとクロムメッキ鋼間の潤滑性評価

摘要

自動車のサスペンションは，路面の凹凸により発生する車体の振動を緩和し，吸収する役目を担っている．サスペンションは大きく二つの要素（スプリングと緩衝器）から構成されており，スプリングは路面から伝わる衝撃を緩和する弾性要素として，緩衝器（ショックアブソーバ，以下SA と略す）は振動を減衰させる制振要素として働いている．SA は現在，油圧式が一般的である．その中でもツインチューブ式が主流であり，内側の筒にはオイル（ショックアブソーバフルード，以下SAF と略す）が満たされ，外側の筒には半分程度SAF が充填されている．チューブ内のピストンにはバルブが取り付けられており，そのバルブをSAF が通過する時に発生する抵抗力（減衰力）により振動が減衰される．したがって，ピストンの速度と減衰力の関係は主にバルブ仕様で決定される．ピストン速度が速くなるほど大きな減衰力を発生する機構になっており，良路走行時には車体の振動がほとhどないため大きな減衰力は必要がないが，悪路走行時の車体の大きな揺れに対しては大きな減衰力が発生し，制振するような仕組みになっている．現在では良路走行が主となっているため，油圧によって発生する減衰力よりも摩擦力が乗心地に与える影響が際立っている場合がある．SA のロッド（クロムメッキ）が上下に微振動するとき，SA の減衰特性はオイルシールから発生する摩擦力が支配的である．従って，オイルシールの材料であるゴムとクロムメッキ鋼間に発生する摩擦係数（以下μと略す）を詳しく評価することは，乗用車の乗心地向上に大きく貢献すると考え，摩擦係数の値だけでなく，その摩擦波形について調査することにした．