流体潤滑性能に及ぼす軸受面摩耗の影響

摘要

大きなラジアル荷重が作用する回転軸は，ジャーナル軸受を用いて支持されることが多い．ジャーナル軸受は，回転軸と軸受部を，潤滑油など流体の動圧作用，主にくさび作用により分離し，互いの直接接触を防ぐことで，円滑な動作を実現している．特定の潤滑油を使用した定速流体潤滑下での最小油膜厚さは，荷重の増加とともに減少するが，特に回転軸が低速な場合，荷重の影響が顕著となり，直接接触が容易に起こり得る．軸受表面では，運転時のなじみ性などを考慮して，回転軸よりも，低硬度の材料が適用されることが多い．したがって，いったh接触が生じれば，軸受形状を損うほどの甚大な摩耗や損傷が発生する可能性が高くなる．軸受形状が崩れれば，回転軸とのくさび作用，すなわち，流体動圧を維持することはもはや困難となる．本研究では，回転軸の形状が，軸受接触面に転写された摩耗を想定し，ISO VG220 の高粘度工業用ギヤ油潤滑下において，真円ジャーナル軸受の流体潤滑解析を行った．その上で，摩耗の深さが，潤滑面上の最小油膜厚さや偏心角，そして圧力分布にどのような影響を与えるかについて調査した．