塩分を含む使用済みセシウム吸着塔におけるステンレス鋼の腐食挙動

摘要

福島第一原子力発電所事故の滞留水処理においては，滞留水から放射性物質を取り除くために，Cs吸着塔が設置されている．Cs吸着塔は，ゼオライトを詰めた吸着塔に汚染水を通過させ，放射性Csを取り除く装置である．Cs吸着塔にはステンレス鋼（SUS316L）が用いられているが，初期の滞留水には海水成分が含まれていたことから，塩化物イオン（Cl）による局部腐食が懸念されている．放射性Csからの放射線は残水中に過酸化水素（H_2O_2）を生成させ，これがステンレス鋼の自然浸漬電位を上昇させ腐食を加速する可能性もある．