一次近似信頼性手法による材料特性のバラツキを考慮した異方性金属板の成形限界評価

摘要

一般に，板材の成形限界を実験的に評価すると，その結果は少なからずばらつくものである．そのバラツキが一体何に起因しているかをMinhらは綿密な実験により調べ，成形限界のバラツキは，その実験的評価過程に含まれる不確定因子よりも，材料の特性値のバラツキに大きく影響されるとの結論を得ている．そこで最近Banabicらは，材料特性のばらつきは不可避であるとして，異方性金属板の成形限界を成形限界バンド（FLB）という形で理論的に予測しているが，そこに確率的要素は取り入れられておらず，簡単な感度解析のみからFLBの上下限値を求めている．一方，Kimらは面内等方性板材の成形限界の統計量をSwiftの拡散くびれ条件を基に解析的に評価しているが，数値計算に用いている材料特性値の統計量の現実性に乏しい．本研究では確率論手法を用いて，材料特性にバラツキを有する面内異方性板の成形限界を，M-K理論に基づき統計的に評価し，材料特性の実際の統計量を用いてFLDの信頼性を数値計算した．