水面付近を自律推進する魚の遊泳·跳躍·遡上の3次元数値解析

摘要

魚類やイルカやシャチといった哺乳類も含めた水棲生物のことを単に「魚」と呼ぶことにすると，魚の遊泳運動に関する研究は以前より広く行われているものの，未解決な問題や謎が多く残っている.例えば，“Grayのパラドックス”は広く知られているが，それ以外にも，魚の跳躍運動について，その挙動の詳細は明らかになっていないのが現状である.魚の跳躍に関する研究としては，アユが魚道等を遡上する際の跳躍行動パターンとプール水深の関係にっいて報告が行われているが，力学的な視点からの解析はなされてはいない.このような魚の遊泳運動に関する問題を調査するにあたり，実際の魚を用いて詳細な実験·観察を行うことは非常に困難であることから計算流体力学（Computational Fluid Dynamics，CFD)による解析が新たな知見の獲得に効果的であると考えられる.魚の遊泳運動に関する剿直的研究としては，胸ひれのある魚モデルの自律推進に関する3次元解析など国内外問わず，多く行われているものの，そのほとhどが水面の影響を考慮せず水中を遊泳することを想定した数値解析であり，著者らの知る限りでは水面を考慮した魚の遊泳運動に関する数値的研究はほとhど行われていない.