平面2次元数値モデルを用いた分·合流部の河床変動解析

摘要

近年，治水と環境とが調和した川づくりが求められている．河道内の中島は，生物への良好な生息環境を提供するなどの環境機能を有している一方で，死水域の発生や土砂の堆積などによる流下能力の低下を引き起こす場合もある．中島は，このように環境面および治水面のいずれの面からも重要な箇所であり，治水と環境とが調和した川づくりを行うに当たって重要な箇所の一つと考えられる．中島周辺では当然のことながら，流れの分合流が生じる．分合流部は，上述したように治水上重要な箇所であることから，そこで生じる流れと土砂流送を把握する目的で，数々の研究がなされている．いずれも，合流あるいは分流部での砂州の動きや土砂堆積が，水位や分流量に対してどのようなインパクトを与えるかを把握することに着目したものであり，このことからも分合流部での土砂動態の把握は，治水面上，極めて重要であることがわかる．従って，分合流部での流れと河床変動を予測するための何らかのツールが必要となるが，分流部での分流量や流砂量などについて検証が行われたモデルは著者らの知る限り存在しておらず，その予測手法について十分な検証がなされていないのが実状である．著者らは，このことを踏まえ，分流および合流部を有する河道での河床変動数値モデルを構築し，実験結果に基づき検証を行った．その結果，同モデルが，砂州の発生やそれに伴う水位の上昇等を再現できないものの，平均的な河床については予測可能であることが確認された．本研究では，以上のような背景を踏まえ，分流および合流部を有する河道での河床変動が予測可能な数値モデルの構築を目的としている．ここでは，前報で開発した著者らの河床変動モデルに小規模河床形態に応じた抵抗則と有効掃流力の取り扱いを組み込み，分·合流部での河床変動の再現性を実験結果に基づき検証した．