超硬合金の超精密ダイヤモンド切削に関する研究－WC粒子径が仕上げ面粗さに及ぼす影響

摘要

スマートフォンやデジタルカメラの普及により，プレス加工でガラスレンズを量産するニーズが高まっている．ガラスレンズは400～800度という高温でプレス成形されるため，プラスチックレンズに比べて，金型の耐久性が求められる．そのため，超硬合金製金型が注目されている．しかしながら，超硬合金の切削は極めて困難であるため，一般的には放電加工と研削·研磨加工によって仕上げられている．この加工プロセスは，加工時間とコストの面で非常に生産性が悪く，切削加工による直彫りが求められている．超硬合金は切削工具として使用されることも多く，非常に高硬度な材料である．したがって，工具摩耗の急激な進行，チッピングの発生により高精細な切削加工を安定して行うことが困難である．多くの研究者は様々な視点の中で研究しているが，そのほとhどが工具摩耗に関して調査されたものである．また，切削仕上げ条件下での仕上げ面性状についての研究は，あまり報告されていない．マイクロメートルオーダーの切込みのマイクロの切削条件下において，切削変形領域と工具切れ刃丸み半径の大きさがWC 粒子径と同程度のオーダーになるため，WC粒子の大きさが仕上げ面性状に大きな影響を及ぼすと考えられる．そこで本研究では，ダイヤモンド工具を用いて超硬合金の超精密切削実験を行い，切削条件が工具摩耗や仕上げ面性状に及ぼす影響について検討した．工具切れ刃丸み半径の異なる単結晶ダイヤモント工具(SCD)および多結晶ダイヤモンド工具(PCD)を用いて，異なるWC粒子よりなる超硬合金の切削を行い，切削断面の大きさ（送り×切込み）とWC粒子径，刃先丸みの関係から考察した．