集合住宅における太陽熱給湯システムの省エネルギー及び環境保全性の検討

摘要

家庭におけるライフサイクルのエネルギー消費割合は，原材料が約18%，生産や廃棄に関するものが12%，そして居住時におけるものが約70%を占める。さらに居住時におけるエネルギー消費量の内訳では，給湯が約30%，暖房が約24%，冷房が約4%，そして調理や照明等で約42%であり，給湯·暖房という40～60°C程度の低温の熱負荷が約半分を占めていることが分かる。このような低エクセルギー用途には太陽熱の活用が有効であるにも関わらず，太陽熱利用システムの設置台数は減少の一途を辿っている。このような市場の縮小は，要素技術の低迷のみならず，設計技術者数の減少など長期的な視点からも甚大な悪影響をもたらす可能性がある。太陽熱給湯システムの市場規模拡大のためには，近年竣工数が増大している集合住宅への普及が必須であると考えられる。しかし集合住宅では居住密度が高く，十分な屋根面積が確保できないケースも多い。そこで本検討では，都心部に建つ集合住宅を対象に，比較的低い太陽熱依存率で設計されたシステムに対し，集熱器の設置傾斜角度等が運転性能へもたらす影響に着目する。また，ベランダ設置型の集合住宅用太陽熱給湯システムも見られることなどを考慮し，集熱器の設置傾斜角度を90°とした場合も含めて検討する。