実用化を目指した長期的な橋梁維持管理計画最適化

摘要

近年，橋梁の維持管理におけるライフサイクルコスト（Life Cycle Cost: LCC）の削減と安全性の向上を目指し，維持管理計画策定に関する研究[1, 2]が行われている．本論文では，長期的な維持管理計画の策定による維持管理費用の削減により，持続可能な維持管理の実現を目的とする．長期計画策定における課題として，劣化予測などの不確実性や年度予算に対するコスト平準化が挙げられる．これらの影響により，橋梁の安全性や補修費用の確保のために計画の変更の必要性が生じるが，策定した計画から予算を変更することは，長期計画策定の意義と反するため望ましくない．さらに，どの程度計画を変更すれば安全性を維持できるのか明確でないことから，計画変更のための意思決定は非常に困難であると予想される．本論文では，不確実性による計画変更への対応方法を提案し，長期的な維持管理計画策定における意思決定支援システムの構築を目指す．提案手法では，まず遺伝的アルゴリズム（Genetic Algorithm: GA）を用いて予防保全を考慮した計画を策定する．GA により複数回探索すると，長期的な計画であるが故に，同程度の予算と安全性を保持した若干異なる実行可能な準最適解が導き出される．つまり，探索された一つの計画には，変更しても，予算や安全性をそのままに維持した期間が存在することが想定される．本論文では，これに着目して，計画を再策定することなく，フレキシブルに計画を変更することが可能となり，計画策定における意思決定支援に用いることができると考えられる．本論文では，数値実験において，複数橋梁に対する計画を策定することにより，提案手法による不確実性への対応の有用性を検証する．