水を加工液とするための耐水耐食加工機·超高精度加工水浄化再生濾過システムなど有した一連の電気防錆加工法システムの提唱と開発研究

摘要

従来，ものづくりの現場である機械加工産業に於いて，生産効率·能率を向上させるべく加工を円滑に行なうため，切削油や研削液と言った加工液が使用されている．この加工液は切削·研削加工時の潤滑性向上のための油剤（鉱油·動植物油）や界面活性剤，快削性向上のための極圧添加剤（塩素，リン，硫黄系の化合物．なお，現在はJIS 改訂により塩素系極圧添加剤は国内では使用しない方向にある），工作物の錆を防ぐ防錆剤，液の泡立ちを防ぐ消泡剤，さらに加工液における雑菌繁殖と腐敗抑制のための防腐剤·殺菌剤など様々な化学物質が含まれる．図1 に加工液の問題を示す．加工時において，加工液は高速回転の工具により飛散し，また，ミストを発生し，液の腐敗による悪臭も合わさって生産現場内に漂い工場雰囲気を悪化させ，また周囲に液が付着し汚れを生じる．さらに作業者の体への接触は皮膚炎や，吸引による呼吸器障害といった健康被害の懸念がある．このようなことから，いつしかものづくり現場である生産現場は3K（危険·汚い·きつい）や5K（3K＋臭い·暗い）とのイメージが若者の間で持たれ，ものづくりが敬遠される傾向にある．加工貿易によるものづくり立国である日本に於いては重大問題である．また，劣化した使用後の加工液は廃棄されるが，その際，焼却処理や凝集沈殿などの廃液処理がなされ，発生する残灰や汚泥は埋立て等処理がさらになされる．そのため，毎年莫大な処理費用を生じ，また，焼却等廃液処理時に発生する温室効果ガス（二酸化炭素など）の排出のため多大な環境負荷も発生する．さらに原油由来の加工液更液費やそれに伴う管内洗浄による洗浄廃液発生，廃液保管·輸送のためのコストもあり，後年，規制強化から廃液処理費増加の可能性もある．昨今の環境規制強化や，ISO 14000S，環境に対する世界的意識の高まりから京都議定書（温室効果ガス6%削減）を始め，国連気候変動首脳会議での2020年までに1990年比で25％の温室効果ガス削減といった目標が掲げられる．また，震災により，逼迫や原油·電力の資源問題，環境汚染から，「持続可能な開発」の重要性は一層高まっている．産業現場においてはそのような現状から，加工液を減らす·使用しない環境調和型加工法の開発·実用化が期待されている．