受動運動時の運動スピード変化による脳内血行動態への影響

摘要

現在の日本では、少子高齢化が急速に進hでおり、我が国における深刻な社会問題となっている。この様な社会では、高齢者の全人口に占める割合が大きくなるため高齢者の生活の質（Quality of Life: QOL）の向上を目指し、できるだけ多くの高齢者が自立した生活を送れる社会を実現する必要があると考えられる。人間は加齢に伴い身体機能だけでなく脳機能など様々な機能が徐々に衰えていくものである。しかし、現在の我々の日常生活では機械化·情報化が進み、認知·判断·記憶などの様々な脳の高次処理が必要とされており、高齢者が自立した生活を送るためには身体の健康維持に加え脳機能の健全さを保つことが必要である。従来の研究より、有酸素運動には、加齢に伴う認知機能の低下の抑制効果が示されている[1]。また最近では、乗馬療法を参考に乗馬時の揺れを再現した騎乗型鍛練機（JOBA, パナソニック）が筋力アップや柔軟性の向上など身体機能の改善[2]だけでなく脳の活性効果や認知課題の学習促進[3]が報告されている。これらの鍛練機では、乗馬を再現したシート部の揺れに対し姿勢維持のために自然と筋肉の活動を誘発する仕組みになっている。また、有酸素運動に比べ座位姿勢で行えるため運動負荷が小さく安全性が高いため老若男女問わず行える利点がある。本研究では、乗馬時のように自らの意思に関係なく外部より受ける運動により誘発される受動的な運動を他動揺動運動と定義し、この運動の揺れのスピードを変化させることで脳活動にどのような変化を及ぼすのか検討するために実験を行った。