自己拡散係数の計算系形状効果に関する流体力学的考察

摘要

ナノスケールの微細構造による閉じ込め液体，例えばメソポーラス体を介した流動や半導体のウェットプロセスに見られるナノパターン内部の流体挙動は，今日の先端的なナノスケール技術の進展に伴い，極めて重要な研究対象となっている．分子動力学（MD）シミュレーションは，これら微細なスケールにおける分子ダイナミクスの解析に有効な手段であるが，計算負荷や計算条件による制約から，本来模擬すべき現実の系より小さな計算系サイズを利用することも多い．この場合，MD 計算によって得られる種々の物理量に対する計算系のサイズ効果には十分な注意を要する．また，最近では解析対象である現実の系そのものが分子スケールに至っており，液体の閉じ込めによる影響を，そのメカニズムを明らかにした上で詳細に理解する必要がある．