ブレインモルフィックコンピューティングハードウェア: 脳型物理デバイスからの構成的アプローチ

摘要

脳の情報処理様式を実装し，脳に特異的な機能（意識・無意識，予測・推論・記憶，注意，自己・自律性など）を実現するためには，ノイマン型コンピュータとは本質的に異なる計算原理、アーキテクチャ、デバイスが必要である．そこで、我々は「ブレインモルフィックコンピューティング(BMC)」パラダイムを提唱し、これを実装するBMCハードウェアについて研究を進めている．BMCの要件は、A) 脳神経系の解剖学的，生理学的な「構造」や「仕組み」を模倣して情報を処理する；B) 物理化学的な「プロセス」（ダイナミクス）によって情報処理を行う；C) 最新の脳神経科学，特に，意識・無意識などの高次機能の知見を反映させる；D) 進化的構造と機能や，身体的・環境的制約等を積極的に活用する，などである．特にB)では，(1) デバイスの物理的・動力学的性質を直接的に利用して，生物物理をデバイス物理で模倣・再現することや，(2) 複雑性・複雑ダイナミクスを活用し，情報の豊な表現と，多様で分散した情報の統合とを同時に実現することなどが重要である．