次世代天文学観測装置用の新しい高分散回折格子V

摘要

天体望遠鏡の大型化に伴って分光観測装置も巨大になってしまう。透過型回折格子はコリメータや結像光学素子の近傍に置くことができるために、光学系および装置全体の小型化が可能であり、高分散の透過型回折格子の実用化が望まれている。新しいRFT (reflector facet transmission) gratingやVB(volume binary) grating (厚い矩形回折格子）は、いずれも透過型回折格子であり、大きな角度分散と高い回折効率を実現できる。そのためにこれらの回折格子によって、観測装置の感度の向上や小型軽量化が実現できる。なお、VB gratingは単体でも使用されるが、プリズムと接着してグリズム（直視回折格子）を構成することができる。我々は厳密結合波解析（RCWA)法を用いた計算によって、これ らの回折格子の回折効率や波長帯域幅が最適になるような形状を求め、超精密ダイアモンド切削やMEMS等の最新技術を駆使して、TMT (Thirty Meter Telescope)や8.2mすばる望遠鏡の次世代観測装置用として、これらの回折格子の製作方法の開発を行っている。