宍道湖における硫化水素の挙動とヤマトシジミに対する影響

摘要

宍道湖は，淡水と海水が入り混じる汽水湖である。宍道湖に海水（高塩水）が流入すると，その高塩水は湖底を這うように湖盆部まで移動し，成層化する。この様に，密度や物質分布の大きな鉛直勾配が湖底近傍にのみ偏在するような構造を“底成層”と呼び，これは宍道湖特有の現象といえる。底成層が形成すると，湖底への酸素供給が抑制されるため，湖底の無酸素化が進行し，さらに悪化すると硫化水素が蓄積する。2012年8月には，底層の還元化が進行し，底層水から22 mgS/L,湖底堆積物中から140 mgS/Lもの硫化水素が検出された。さらに同年9月には宍道湖の西岸において"青潮"が発生し，宍道湖の生態系に大きな影響を及ぼした。そこで本研究では，宍道湖における硫化水素の実態を把握するため，宍道湖湖心を対象に調査を行った。また，2012年8月に宍道湖湖心の底層から検出された硫化水素濃度を基に，ヤマトシジミの硫化水素耐性試験を行った。