草木ダム貯水池の洪水流動を考慮した 洪水流入量，放流量の評価方法に関する研究

摘要

洪水時のダム貯水池は，流動形態から図-1に示す湛水領域，遷移領域，上流河川域に分類されるが，現行のダム管理では貯水池内の水面がほぼ水平に上昇するとみなしてダムへの洪水流入量，ダムからの放流量を算定してきた．すなわち，現行のダム管理では，貯水池下端のダム堤体付近で観測された貯水位とダム放流量算定式から放流量Qoutを算定し，放流量と貯水池の水位-水量（HV）関係に基づく貯留率dS/dtからダム流入量Qinを算定することにより管理が行われている．この手法は，貯水池内の洪水流量の連続性の関係を用い，ダム流入量，放流量を簡易に推定可能にしている．複雑な形状を有するダム貯水池を流下する洪水流は，貯水池内を流動しながら時空間的に流量・水位波形を変形しつつ流下する．しかし，現行のダム管理では，洪水流の時空間的な流動変化にともなう貯留（図-1中のdS’）の影響は考慮されていない．安全で，効率的・効果的な貯水池管理のためには，貯水池内洪水の流動，貯留，伝播メカニズムの検討に基づくダム流入量，放流量を評価することによって，現行のダム管理方法の検証が必要である．