蓄電池の無効電力制御及び仮想同期発電機制御による大規模ウィンドファームを有する電力系統の安定度改善

摘要

近年，地球温暖化や化石燃料の枯渴など様々な地球環境に関する問題への関心が高まっている。そこで地球環境問題の対策として太陽光発電(PV)や風力発電(WF)の様な再生可能エネルギーが注目されており，世界各地で導入が進hでいる。再生可能エネルギーの導入が拡大される中，とくに風力発電は他の再生可能エネルギーに比べ，発電コストが低く，電気エネルギーへの変換効率も高く，大規模導入が可能である等の利点を有している。しかし，風力発電の動力源は風であり，天候に影響を受けるため出力が変動する。このような不安定要素の多い特性から予測が難しく ， 風力発電が既存系統に大量に連系されることで引き起こされる課題がいくつかある。その課題の一つとして，大規模な風力発電所を有する電力系統で落雷などによる地絡故障が発生して風力発電機が解列すると，その結果系統に重負荷がかかることによって系統が不安定になる恐れがある。これを防ぐ効果的な方法として，電力貯蔵装置による制御が検討されている。電力貯蔵装置として実用化が進hでおり，かつ大容量のエネルギー貯蔵性能を持つシステムは蓄電池である。すでに内外において数十MWから数百MW定格の蓄電池が設置ないしは計画されている。そこで，筆者らは電力系統において地絡故障が発生した場合に，蓄電池による風力発電機の解列を防止するための無効電力制御法と系統不安定化を防止するための仮想同期発電機制御法(Virtual Synchronous Generator, VSG)を提案し，シミュレーシヨン解析により系統安定度の改善効果があることを確認した。更に本稿では，蓄電池の接続箇所を複数に切り替えた際の安定化制御の有効性を電力系統解析ソフトPSCAD/EMTDCを用いたシミュレーション解析により検証する。