TOC 思考による企業戦略立案のための支援方法に関する研究

摘要

日本の株式市場は欧米のマーケットや中国マーケットの成長に比べ停滞状態が長く続いている。また、世界では米中の貿易戦争に代表される国際調和の不安定や、パリ協定に代表される地球規模の環境問題解決のニーズの高まり、更にはITの指数的な成長が引き起こす第3次第4次産業革命が著しい外部環境の変化を起こし、企業経営を難しくしている。このような経営環境を乗り越え日本のマーケット(日本の株式市場)を維持・成長することを目的として2016年に経済産業省は産官学での委員会「持続的成長に向けた長期投資（ESG/無形資産投資）研究会が立ち挙げられた。議論された2つの課題は、1.「企業による戦略投資」と2.「投資家による長期投資」である。議論結果として、企業価値が企業と投資家の「協創」を通して創造されること指摘がなされ「伊藤レポート2.0」としてまとめられた。更に実効性を高めるために企業と投資家の対話のフレームワーク「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス－ESG/非財務情報と無形資産―（価値協創ガイダンス）が作成された。このガイダンスの構成をFig.1に示す。企業がESGを戦略に組み込み成果を重要な成果指標に基づき経営者と投資家が対話をすることが成長に結び付けるデザインになっている。本書ではこの重要な成果指標を向上させる重要な戦略を分析し、更に戦略として具体化するプロセスについてTOCの思考プロセスを活用して検討をした。