振動水柱(OWC)型波力発電装置(Wave Energy Converter)は,波のパワーから電力を得る波力発電装置の一つである.OWC型波力発電装置には,波パワーから空気パワーへ変換する一次変換と,空気パワーからタービンを回して電力を獲得する二次変換がある.OWC型波力発電装置は,OWCと,その上部の空気室,タービンダクトと空気タービンから成っている.OWCの挙動は水波そのものととらえることができ,その挙動は空気室内の空気圧力の影響を強く受ける.OWC型波力発電装置は,OWCの挙動,空気室内の空気圧力,タービン負荷が相互に影響しあう非常に複雑なシステムである.この空気室の挙動は空気室の体積によっても異なってくる場合もあり,また実機における空気室内の挙動を縮尺模型で再現する際に,縮尺の影響があることも報告されている1).この非線形性や縮尺影響のひとつの要因は空気の粘性によるものであると考えられるが,それだけでなく空気の圧縮性についても指摘されている1).空気は水に比べて圧縮率が高いため,空気室内の空気の動的挙動は複雑になる.また,空気の出入り口となるノズル付近では粘性影響により渦が発生する.既存研究1)では,空気の圧縮性がOWC型波力発電装置の空気室内の空気圧と流量に影響を与えることが示されており,空気体積と空気圧に関わる状態方程式によって圧力特性が異なることが報告されている.2)現在までにOWC型波力発電装置の縮尺の違いによる空気室内の空気の圧縮性の影響が指摘されているが,その考察自体は限定的である.そこで,本研究では縮尺,空気室容積や形状が異なる3つのタイプ,合計22体の模型を用いた静水中強制動揺実験の結果から圧力特性などの詳細を調べた.また,線形ポテンシャル理論を適用した数値計算と比較して圧縮性や粘性の影響についても考察する.OWC型波力発電装置を対象とした数値計算による多くの研究では,空気室内の空気は断熱的に変化すると仮定されているが,等温変化を仮定している例は少ない.そこで,本研究では空気室内空気が等温変化すると仮定した場合と,断熱変化を仮定した場合での圧力特性などの比較により,縮尺影響や非線形影響について考察した.
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