交流磁気浮上モータの開発（第１報）基本構想と原理検証

摘要

磁気浮上とは，磁力を用いて物体を非接触かつ低摩擦で支持する技術である．運動の潤滑性，保守性の向上などの利点を有する．そこで磁気浮上式鉄道のように高速移動する物体の支持や，特殊環境下で用いられる磁気軸受に応用されている．磁気浮上は磁力の発生源や物体の種類により様々な方法が提案されている．ここでは，LC 回路を用いた交流磁気浮上系について議論する．本方式はコイルを備えた電磁石とコンデンサ，交流電源で構成される系である．物体の位置を検出する独立した機構を持たず，コイルの自己インダクタンス変化によりコイルの励磁電流が変化する自己平衡性とよばれる特徴を持つため無制御浮上が実現される．しかし，Kaplan(1)は，外部減衰がなければ不安定な振動は生じることを実験的に示し，静的安定性のほか動的安定性が必要であることを指摘した．荒井ら(2)は，オイルによる減衰を利用して自励振動を防止し，スラスト荷重を支える交流共振型磁気軸受を試作した．ここで物体を非接触支持すると同時に回転させる機能を持つセルフベアリングモータを開発する。まず、交流磁気浮上により物体を空気中で動的に非接触支持する方法として間接ダンピング法を適用する。そして，同方式による磁気軸受を試作し被支持物を回転運動させるモータの基本構想を提示する．その原理に基づく実験装置を製作し特性を評価する．