笹侵食湿地土壌において嫌気酢酸酸化を担う微生物の多様性

摘要

湿地は主要な大気メタン放出源のひとつであるが、笹に侵食された区域ではメタン生成が抑制される。酢酸は嫌気有機物分解過程において重要な中間代謝産物であり、そのほとhどは酢酸資化性のメタン生成菌により利用される。一方で、一部の酢酸は二酸化炭素へ嫌気的に酸化されることが示唆される。この反応を担う嫌気酢酸酸化微生物は、酢酸資化性メタン生成菌と基質競合関係にあり、メタンの放出を抑制すると考えられている。しかしながら、吸エルゴン反応である嫌気酢酸酸化(ΔG~(0,) = +104 KJ/mol)を担う微生物の系統はほとhど分かっていない。我々が開発した超高感度rRNA-SIP(Stable Isotope Probing)は、炭素の安定同位体（~(13)C)で標識された基質を環境試料に添加·培養し、同位体標識rRNAを密度勾配超遠心で分離し、それを次世代シータエンサーにより大規模に解析することで、同位体基質を分解して取り込む微生物を高感度に同定する手法である。本研究では、超高感度rRNA-SIPによりメタン生成菌と基質競合する嫌気酢酸酸化微生物を同定した。