指定確認検査機関の法学的考察と建築行政に係る課題

摘要

平成10年の建築基準法改正において、昭和25年建築基準法施行以来、官が独占的に行ってきた建築確認業務を民間開放する制度改正が行われた。平成9年の建築審議会答申によれば、建築行政の課題として①経済社会の構造的変化と規制緩和の要請②構造的変革に対応した行政の見直しの要請③震災を踏まえた安全性の確保の要請をあげている。後段で講ずべき具体的施策として①民間の確認審査機関の制度化②①の活用により特定行政庁の確認・検査能力の向上と違反対策等の整備体制し、同法の実効性をあげると答申している。また、建設省（現国土交通省）は、参考文献において、特定行政庁では、技術革新等による確認事務内容の増加、まちづくり関連業務の増加及び厳しい財政状況をあげ、現在の特定行政庁のマンパワ―では対応が困難で有り、民間の建築関係専門技術者の高度な知識の活用を制度設計のよりどころとしている。この点、今の社会・経済情勢を鑑みれば、上記理由は合理性を持つが、社会情勢が都市化社会から都市型社会へおと移行する中、CO_2や高齢化社会への対応や、各自治体がまちづくり条例等を制定し、独自のまちづくりを展開していく中、現建築基準法や指定確認検査機関制度では、上記課題の対応として改善の余地があると考える。本論では、指定確認検査機関と建築確認の法学的考察を行った上で、諸外国の建築規制制度と比較することにより、日本の建築確認制度の課題を明らかにして、同制度の改善を提案するものである。