基底共有型非負値行列因子分解に基づく楽器音の共通・固有成分の分析

摘要

一般的に，個人の演奏や楽器本体の芸術的価値は，一定の品質を超える範囲において，評価者の主観に基づいて評価される．例えば，「アマチュア奏者とプロフェッショナル奏者の演奏の差異」や「安価な楽器と高価な楽器の奏でる音の違い」が主観的に語られることは多い．しかしながら，これらの観点について主観を廃して定量的に議論する方法はあまり確立されておらず，とくに音楽演奏や楽器に対して精通していない者にとっては，芸術的価値を判断する材料がないため他者の主観的評価に頼らざるを得ない．もし，複数の楽器音信号の音響的違いや芸術的違いを客観的かつ定量的に表現・評価する音響特徴量が推定できるならば，アマチュア奏者がより良い演奏をするために必要な技術の提示や，より芸術的価値の高い楽器の設計製作等に役立てることができる．さらに，そのような音響特徴量は，楽器音信号の音色変換，識別，検索等にも応用することが可能と考えられ，音楽という万人が親しむ芸術文化のさらなる興隆につながることが予想される．