線状降水帯豪雨予測に向けた水蒸気のアンサンブル予測情報の更新履歴解析

摘要

本研究では防災の視点から、線状降水帯豪雨に対するアンサンブル予測の高度利用手法を検討した．初期値の更新に伴い予測が更新されても，アンサンブル平均が現実に近づかない特徴（パターン1）と，ばらつきが小さくならない特徴（パターン2）が，予測困難な現象に対して表れると仮説を立てた．平成29年7 月九州北部豪雨を対象とし，複数の初期時刻からそれぞれアンサンブル予測計算を行い，降水に先行する物理量である水蒸気の予測情報を調べた．パターン1 は豪雨災害の起こった朝倉市周辺で強く見られ，パターン2 は朝倉市周辺の他、水蒸気流入の上流側でも見られた．これらの特徴は豪雨の時間帯とある程度対応しており，線状降水帯豪雨の発生，継続の予測への利用可能性を示した．また，パターン2 を用いた豪雨の定量的な予測への検討を行った．