寒冷地対応型ポータブルPM2.5測定システムの開発と性能評価及び利用希望者への情報提供

摘要

現在進行している地球温暖化において，北極域及び周辺域を含hだ特に中緯度から北極圏において，将来温暖化の進行と共に森林火災とそこから排出される大気汚染が予測されている（Veira et al., 2016）．大規模森林火災からは大気汚染が発生し，高濃度PM2.5 が例えば，シベリア域及び周辺域の森林火災から発生し北海道（札幌）まで輸送されることが報告されている（e.g.,Yasunari et al., 2018）．近年，衛星観測により森林火災の発生箇所の特定は容易となったが，実際に現地においては，アクセスやメンテナンスの難しさから現地の地上PM2.5 測定は困難な場合がある．日本国内では相当な数のPM2.5 測定機器が環境省により設置され，高密度観測が展開されている．一方，シベリア域では，未だ地上の時空間PM2.5 変動がよくわかっていないという状況である．このような場合，高価な機器を多数設置することは現実的でなく，シベリアは通年観測をする際にも冬季極寒な気候がよく知られており，観測機器自体にも工夫が必要である．そこで，我々の研究グループでは，名古屋大学と（株）パナソニックが共同開発した安価な小型PM2.5 センサー（Nakayama et al., 2018）を使用して，極寒の寒冷地でも使用できるシステム（自動温度調節断熱ボックス）を開発し，それにPM2.5 センサーを組み込み測定性能などの検証を行なってきた（若林, 2020）