コンビナトリアル手法を用いたFe-Cr 系における磁気転移の一括解析

摘要

マテリアルズインフォマティクス (MI) の発展を背景に，新規材料の探索やプロセスの最適化が精力的に進められている。MI は材料探索に情報科学的手法を活用することで，材料組成や物性を最適化するための枠組みであり，材料開発の加速化が期待されている。その一方で，材料データや計測データの取得は効率が課題となっており，効率的な実験データの取得方法の開発が急務となっている。そこで本研究では網羅的かつ自動的に実験を行うコンビナトリアル手法に着目し，効率的な材料作製および機能解析の枠組みを開発した。実験ではFe-Cr 二元系合金を対象に，(1)マグネトロンスパッタによる効率的な材料作製，(2)光電子顕微鏡 (PEEM) による効率的なデータ取得，(3)情報統計を活用した磁気状態の解析を行なったので，その結果について報告する。Fe-Cr 合金はスピントロニクスにおける代表的な磁性材料であり，組成に応じて強磁性から反強磁性へ転移するため，コンビナトリアル合成の絶好の対象である。試料はスパッタ装置と治具を組み合わせてFe-Cr 二元系傾斜薄膜を微小領域に一括で作製した。解析ではPEEM を用いた。PEEM は観測視野内の情報を一括で取得することができ，ピクセル毎にX 線吸収スペクトル (XAS) とX 線磁気円二色性 (XMCD) を記録できることから，組成と電子状態と磁気情報を効率的に取得できる。取得した大容量のデータについて情報統計を活用しながら強磁性-反強磁性転移の解析を行なった。