現代の複合建築に関する研究:建築空間と周辺環境との関係からみた公共建築の複合性と公開性（その1)

摘要

現代の都市において、従来の単一用途ではない、複数の用途が集合した複合建築が多く建設されている。例えば、再開発事業や駅ビルなどがあるが、それらは、現代の高密な都市環境において、用途を集積させることで土地や空間を高度利用するという功利的側面をもっといえる。また、複合建築は、異種用途が隣り合うことによつて、用途が単独である場合と比べ、相乗効果が生じる事例がある。これは、複合化された各機能を内包する空間がどのように隣接するかという、相互関係によって成立する。さらに、周辺環境による影響を大きく受けると考える。都市部と地方都市では、建築を取り卷く環境は異なり、例えば地方都市では、地域再生の要として「これからの地方の公共建築の望ましいあり方」について議論され、そこに複合建築が採用される例も少なくない。複合建築においては、各用途の充実だけではなく、内部空間における各用途の隣接関係による相乗効果といった[複合性]と、周辺環境に対する[公開性]の関係の充実が重要であると考える。異なる用途を有する複合建築において、[建築空間の構成（内部空間における複合性）]と[周辺環境との関係（外部空間に対する公開性）]の水準を検討することは、新しい空間構成を創成すると考えられる。