坂井市旧三国町における登記情報からみた不動産継承の分析歴史的市街地における不動産継承の実態に関する考察　その3

摘要

福井県坂井市にある旧三国町は、九頭竜川の河口に位置する北前船の交易によって繁栄した湊町である。「かぐら建て」と呼ばれる独自の建築様式を中心とした歴史的町並みが現存しているが、近代化による物流手段の変化や産業構造の転換、少子高齢化といった理由で市街地に空き家空き地が増加し、問題視されつつある。　著者はこれまで旧三国町内において不動産継承に関する研究を行っており、2017 年度は居住者に対しヒアリング調査を実施することで過去の不動産継承について分析を行った。しかしこの調査において、ヒアリング対象者より前の世代に行われた継承については不正確な部分があると考えられる。そこで本稿ではヒアリングを行った物件について、登記簿・土地台帳の記載事項を取得し分析を行うことでヒアリング調査の補完する。特に、明治から戦前にかけての不動産継承についての詳細を把握することで、この時代に多く存在していたと考えられる地縁や血縁を介した不動産継承の実態を把握する。