中層木造建築における木質材料の生産システム評価法の開発

摘要

木材を建材利用することは、生産時の炭素吸収機能と利用時の炭素貯蔵効果など、気候変動問題の対策上重要な意義を有する。2011 年のCOP17（ダーバン）において利用時の炭素貯蔵効果が炭素排出量の削減効果とする算出式が世界的な合意に至り、これを大きな契機として、炭素貯蔵効果の主要利用先である建材利用が強く推進されている。日本でも、建築基準法が改正されるなど、非住宅用途や中層木造建築に期待が寄せられている。さらに、2015 年には国連持続可能な開発サミットが開催され、「持続可能な開発目標（SDGs）」が宣言された。SDGs の理念は「世界共通の諸問題に対して、経済性、社会性、環境性を個別に考えるのではなく、包括的な課題解決に取り組むことで持続性が構築される」ことであるが、適切な森林管理と木材利用の循環性を構築し、これを活用した社会インフラを創出することは、SDGs の理念と合致する。非住宅や中高層木造建築など、これまでの流通経路にない新需要が創出される中で、炭素貯蔵効果だけはなく、その社会性や経済性を考慮した木材生産の在り方を評価することは、持続的な社会における木材生産と木造建築や建築物の木質化を構築する上で急務である。