天井の燃焼性を制御した大規模居室におけるフラッシュオーバー直前段階での壁面の加熱性状予測に関する研究(その1) 研究目的と実験計画

摘要

避難安全上、空間が大規模なほど内装仕上げに要求される防火性能は高度化するが、近年の学校教室規模の火災実験では、壁を木質化しても天井の燃焼を制御できればフラッシュオーバー(以下、FO)時間を著しく遅延できる可能性があることが示された。居室内の火炎は天井に到達後は酸素供給の低下により水平に長く展炎する傾向があるが、過去、火災実験が多数行われてきた住宅居室では、天井高と室平面寸法が大きくは違わないため、火源・可燃壁面上の火炎が天井に届くと、短時間に天井面の大部分が火炎に覆われてFO に達することが多い。しかし、床面積が大きい室では、概して天井が住宅等よりも高く、火炎の天井への到達が遅れ、煙層の蓄積・温度上昇も抑制されること、また、火源やその近傍の壁面からの火炎だけでは、天井面下に展炎しても天井全体に対する割合は小さく、室全体への放射熱源としての影響が相対的に低下することが、天井の燃焼性を制御した場合のFO の遅延の原因と考えられる。