Dynamic Tree Network による避難完了時間を最小化する垂直避難領域分割手法-梅田地下街を対象としたグラフの分割長さを変えた検証

摘要

現在，津波などによる浸水被害が懸念されている大阪梅田地下街では，地下街全体で統一した避難計画の策定が進められている1)．しかし，広大な地下街において実際に避難訓練を行うことは困難であるため，その代わりとして避難シミュレーションが行われている．既往研究として瀧澤ら2)は，梅田地下街を対象にMulti-Agent System（MAS）を用いて，避難者が最寄りの接続ビルへ向かい垂直避難をすると想定して，避難シミュレーションを行なった．その結果，避難完了時間は約24 分となったが，避難者数が収容可能人数を超過する接続ビルがいくつか発生することがわかった．筆者らは梅田地下街の接続ビルの収容可能人数を制約とし，避難者の総避難距離の最小化を目的関数とした避難領域分割問題（Partition problemMinimizing Total Evacuation Distance with Capacity constraint:PMTEDC）3)，さらにDynamic Tree Network (DTN)上の避難完了時間推定式4)を用いて，収容可能人数を考慮しつつ，避難完了時間を最小化する避難領域分割問題（Partitionproblem Minimizing Evacuation Completion Time withCapacity constraint: PMECTC）をそれぞれ定式化し，数理計画ソルバーを使用して垂直避難のための領域分割を求めた5)．結果としてPMTEDC ，PMECTC それぞれの避難完了時間は約38 分と約27 分となり，PMECTC のほうが10 分以上短縮できた．しかしPMECTC は計算が5 日間経過しても終了せず，計算時間が課題であった．