粒子追跡に依存しない顕微鏡動画における拡散係数場の可視化

摘要

流体やソフトマターに漂う微粒子のBrown運動は，有効粘度に限らず周囲環境の情報を得る手掛かりとなる(1)．流体の速度場については，Particle Tracking Velocimetry (PTV)とParticle Image Velocimetry (PIV)の長い歴史があるが，拡散係数の「場」を知りたい時には粒子追跡が前提とされてきた．つまり，速度場で言うところのPTV側に対応する手法しか存在しなかった．しかし，拡散係数の場を知りたいときには，観測領域を 2 次元的に区切ったbin（言い換えると微小なRegion of Interest (ROI)）に粒子が無い状態を回避するために，粒子濃度を高くして実験を行いたい状況にある．また，蛍光染色を前提とすることは応用の範囲を大きく制限することになる．つまり，トレーサーとして人工的に微粒子を導入する場合だけでなく，産業的に元々対象に微粒子が分散している状況において，蛍光染色しないでそれ自体を計測して定量評価できれば理想的である．その時に，光の波長より著しく小さな粒子も扱えるような手法があれば究極的である．本講演では，このような条件を満たす顕微鏡動画データの粒子追跡に依存しない講演者が開発した拡散係数場の評価法(2),(3)を紹介すると共に今後の可能性について述べる．