海洋レーダの視線流速を活用した4 次元変分法による沿岸近傍の流動場推定

摘要

遠州灘東岸域を対象に，VHF 帯海洋レーダによる視線流速データを4 次元変分法で同化することで，海洋レーダでは直接観測できない沿岸近傍の流動場を推定した．推定結果と流速計観測との比較により，両者の差の二乗平均平方根は，流速の絶対値について58％減少させることに成功し，1 局の視線流速データの同化であっても沿岸の流況を推定する上で有効であることを示した．また，過大評価であった海上風に起因する海面せh断応力は変分法により適切に修正され，観測風と整合する結果が得られた．ただし，沿岸近傍で空間勾配や時間変化の大きい流動場の場合には，評価関数の収束性が低下するなどの課題が示された．本研究の手法を用いることで従来海洋レーダでは観測できなかった沿岸近傍の流れを推定できる見通しが得られた．