慣性負荷駆動時の1次抵抗値変動を考慮した誘導電動機ベクトル制御系のオートチューニング

摘要

本研究では，広い速度域においてFF制御が求められる誘導電動機べクトル制御のためのオートチューニング手法を提案した。従来行われてきた研究では，モータパラメータとモータ端子電圧との関係が十分明らかにされていなかったため，1次側と2次側のモータパラメータをそれぞれ調整することは難しかった。また，特に小容量機では回生時に1次抵抗値が増加するため，1次抵抗値を力行時と回生時でそれぞれ調整する必要がある。本研究では，誘導電動機の電圧方程式からPI制御器出力電圧の速度依存性とモータパラメータの関係を明らかにし，∂V_(1dPI)/∂ω_1,∂V_(1dPI)/∂ω_1に基づき1次側と2次側のモータパラメータをそれぞれ調整する手法を提案した。また，回生時の1次抵抗値変動も考慮したオートチューニングアルゴリズムを提案した。無負荷試験により1次自己インダクタンス設定値L_1Sを同定した後，加減速試験によりすベりゲインK_Sと漏れインダクタンス設定値(бL_1)_sを調整し，カ行用と回生用の1次抵抗設定値R_1asとR_1rsをそれぞれ調整する手法を提案した。提案手法に基づき誘導電動機と慣性負荷による実験を行った結果，力行時，回生時ともに，電圧，電流，トルクの連続性を保ちスムーズに制御モード切り替えができることを確認した。本提案手法はPI制御領域でチューニングを行う手法であるため，FF制御モードを必要としない応用に対しても適用可能である。