チヨゥの幼虫の聴覚

摘要

チョウの幼虫は、天敵であるハチやハエに寄生や捕食をうけることがある。チョウ幼虫は、天敵の翅 音や接近時に発生する気流を検知することができると考えられている。天敵の音や気流の検知は、体表に存在する 機械受容器の一種、糸状の機械感覚子（以下、糸状感覚子）でおこなうことができるとされる。これまでに、ジャ コゥァゲハを含むァゲハチヨゥ科の4種の幼虫で糸状感覚子の同定と比較をおこなった。その結果、胸部に1対と 腹部に4対の糸状感覚子が体節ごとに存在した。ァゲハチヨゥ科において、腹部の糸状感覚子4対が存在する体節 (第4-7節:A4-A7)は共通していたが、胸部の糸状感覚子1対が存在する体節は、第1節(T1)または第2節(T2)と 異なることがあった。観察した中で、ジヤコゥァゲハの幼虫を対象として音響刺激を与え、行動反応によって可聴 域を特定した。今回の実験では、寄主植物を摂食している状態で様々な周波数の音をスピーカから頭部正面に提示 し、摂食の停止による行動反応の有無を観察した。その結果、行動反応をおこした周波数は50-250 Hz(90 dBSPL、 測定距離20cm)で、最も行動反応をおこしたのは150 Hzであった。これらの周波数は、ハエやハチの翅音に含まれ ていることから、ジヤコゥァゲハ幼虫は、天敵の音響情報を検知し寄生や捕食の回避おこなっていると推察される。