リモート制作の許容遅延を実現するネットワーク構成の検討

摘要

IP (Internet Protocol)を用いた番組制作において，中継現場と放送局をIP回線で結び，放送局側で番組制作を行うリモート制作に注目が集まっている.これまで中継現場のみで行っていた番組制作をリモート制作でも実現するためには，中継現場の高画質な番組素材映像を，放送局側で少ない遅延で共有し，かつ，放送局側でスイッチングされた映像の中継現場へのリターン映像も，同様に少ない遅延で共有するためのIP伝送装置が必要となる.これまで，リモート制作に求められる遅延やネットワークについての詳細な検討は行われておらず，従来の番組制作と同様な運用を実現するために許容される遅延量や，日本の地理的要因を考慮した実際のネットワークモデル上での実現可否について検討しておくことが望ましい.そこで本稿ではリモ　ト制作に要求される遅延の許容値を明らかにし，日本の地域特性を考慮したJPN (Japan Photonic Network)モデルを用いて，当該許容値を満足するネットワーク構成について検討を行った.検討の結果，許容される送受信間の遅延は33.4 ms(単方向の伝送遅延の目安は16.7 ms)であり，この遅延を実現するエリアカバレッジ率は，受信側のバッファ遅お量を2 msと仮定した場合，ルータ数が10台の場合でも，89.6%を達成できることを確認した.