周波数域受動性設計による粘着剥離感を感じるVCと粘着テープ剥離実験の関係

摘要

バーチャルリアリティ(VR)に用いられる多くのカ覚提示装置は，位置や速度を計測してカを提示するインピーダンス提示が用いられている.一般的にインピーダンス型のカ覚提示システムでは，仮想物体表面に仮想的なばね+ダンパによるバーチャルカツプリング(VC)を設置し，反力を生成する.これに対し，筆者らは仮想的なダンパに代わり，非整数階微分項を利用したVCを用いることで安定に提示できるばね係数を増大させることが可能であることを示し，さらに，周波数域での受動性に着目し，複数の非整数階微分項のパラメータを調整し，最適化することにより，様々な周波数城で指定の受動性を実現するVCの設計手法を提案してきたまた，非整数階微分を用いたVCは使用する非整数階微分項の組み合わせにより様々な触感を得ることができることが分かっており，この非整数階微分項の組み合わせと触感の関係を明確にするため，硬さ感覚の質の違いと周波数域受動性の関係を考察するための「VC見本」を構築してきた.この「VC見本』を作成する過程において様々な受動性分布を設計する中で，ある受動性分布を用いた際に，粘着物質から指などを引きはがすような感触（本研究では，「粘着剥離感」と呼ぶ）を得ることが分かつた.今まで，粘着剥離感を感じるVCを用いて，軽く叩くようなタッピング動作時における各種データの時間履歴に着目し，なぜこのような触感が得られるか実験的に検討を行ってきた.しかし，受動性の周波数分布と粘着剥離感の関連はまだ明らかになっていない.そこで，本研究では粘着剥離感を感じる受動性分布を持つVCの触感や受動性分布と一般的な粘着現象(粘着テープの剥離実験)の特性を比較し，検討を行う.