琵琶湖南湖流域における下水中ノロウィルスの遺伝子型解析

摘要

ノロウィルス（Norovirus)は、世界中の感染性胃腸炎の主要な原因物質の1つである。公衆衛生および医療経済の観点から、感染制御対策を行うことが急務である。ノロウィルスはゲノム塩基配列が変異しやすく、流行する型が数年に一度切り替わることが知られている。 ノロウィルスの流行メカニズムの解明および流行予測には、社会におけるノロウィルスの感染状況の把握が不可欠である。現在、日本においてはノロウィルスの流行状況は、感染症発生動向調査によって把握されている。しかし、これは、病院を受診する比較的症状の重い患者(顕性感染者）からの疫学データであり、病院を受診しないような症状の軽い患者、感染しているのに症状の出でいない患者（不顕性感染者）のノロウィルスのデータは得ることが出来ない。不顕性感染者も含めたノロウィルスの流行状況の把握には、従来の疫学調査ではなく下水でのモニタリングが有効な手段であると考えられる。本研究では、ノロウィルスのVP1のN末端領域の一部をPCRにより増幅し、增幅産物から得られる塩基配列情報を用いてGII ノロウィルスの遺伝子型分類を行った。