甲殻類慢性試験における経口摂取の寄与の検討

摘要

事業場排水を対象に実施した生物応答試験の結 果、他の生物に比し、甲殻類の繁殖に大きな影響を 与える排水が多く、その原因物質として、重金属、 特にニッケルが推察される事例が多いことが報告されている。一般に重金属はpHや硬度などの水質 によって存在形態と毒性が変化することが知られて おり、水質を考慮した金属の急性毒性のモデルとし てBLM (Biotic Ligand Model)が提唱されている 。しかし、作用機序の異なる慢性毒性に適用でき るかは不明である。また、慢性試験時には餌等への 吸着により急激にニッケル濃度が低下すること認め られ、餌を介した経口摂取の寄与も無視できないと 推測された。本研究では、甲殻類に対するニッケル の慢性毒性における経口摂取の寄与を明らかにする ことを目的として、暴露中の飼料への吸着量の把 握、pHや硬度などの水質変化による食餌経由の経ロ 摂取毒性を比較検討した。