DNA変性処理を必要としない水環境中の細菌増殖解析法の検討

摘要

難分解性溶存有機物の蓄積が生態系や水資源利用へ悪影響を及ぼす可能性があり、国内の淡水湖沼において問題視されている。この難分解性溶存有機物は、一次生産で産生された有機物を細菌群集が利用する二次生産過程で生み出されている（微生物炭素ポンプ仮説）。したがって、難分解性溶存有機物の産生や有機物循環への細菌の寄与に関してより詳細に理解することが極めて重要となる。すなわち、細菌群集の増殖活性を評価すると同時に、次世代シークエンサー（NGS)によって難分解性溶存有機物の生産に大きく寄与する細菌種を同定する必要がある。しかし、増殖活性の評価手法として一般的なチミジン法は放射性同位元素の取り扱いに関する法規制が厳しい我が国では使用が難しい。また、チミジン法の非放射性代替法であるBrdU (5-bromo-2'-deoxyuridine)法は、抗BrdU抗体で検出するためにDNA変性処理を必要とし、ゲノム情報を損失する可能性がある。そこで、本研究ではDNA変性処理を必要としないEdU (5-ethynyl-2'-deoxyuridine)増殖解析法の開発に向けて実験的な検討を加えた。