指数バックオフを考慮した無線全二重通信マルチホップネットワークにおけるスループット解析

摘要

無線全二重通信とは, データフレームの送受信を同一周波数上で同時に行うことができる通信方式である．無線全二重通信では，競合により送信権を得た端末によるフレーム送信をプライマリ送信，そのプライマリ送信と全二重通信を行う端末の送信をセカンダリ送信と呼ぶ．この無線全二重通信をマルチホップネットワークに適用させることにより，隠れ端末による衝突の抑制などの効果が期待されている．無線全二重通信マルチホップネットワークの振る舞いを数理的に明らかにするために，文献[1] では無線全二重通信におけるMAC プロトコル(FD-MAC) の動作を考慮したマルコフ連鎖モデルと無線マルチホップネットワークにおけるエアタイムを用いた解析手法を統合した理論解析手法を提案している．一方，これまでに提案されているFD-MAC の多くはCSMA/CA に基づいている．しかし，文献[1] の解析モデルでは指数バックオフの動作が考慮されていない．そのため隠れ端末による衝突が多発するコンテンションウィンドウの最小値(CWmin) が小さいネットワークにはこの解析モデルの適用は不可能であった．