パラフォイル型飛翔体の滑空移行性能改善のための革新的方策

摘要

近年、パラフォイルを用いたさまざまな乗り物が提案されている．たとえば通常のスカイスポーツにおけるパラグライダや軍用物資輸送機の翼として，また宇宙開発ではカプセルの回収機構(GENESIS,NASA)やISS からの乗員帰還機(X-38, NASA)としての応用などがある(図1)．このパラフォイルの特徴として柔軟構造翼であることが挙げられる．これにより大面積の翼を小さな容積で運ぶことが可能となり容積的な制約の強い宇宙開発などで大きなアドバンテージとなりうる．宇宙機の地上着陸用などの応用を考える際、重要になってくる能力は滑空によるダウンレンジの大きさとパラフォイルの展開性である。これまでの研究において我々のグループでは、火星探査への応用を目指した高性能かつ展開性の良い傘体を開発してきた1)。パラフォイルは飛行時のラム圧により形状を支える構造となっており、前縁に空気取り込み口を持っている。これが大きな抗力発生源となり性能を悪くしていた。過去のX-38 では最高揚抗比が3 程度であった。これに対して我々の開発した部分密閉型パラフォイルは空気取り込み口をふさぎ、傘体内部にガスを注入することで強制的に膨らむ構造となっている。詳細な構造は内部にガス圧で膨らむインフレータブル構造の桁、翼型形状をかたどったリブ、表面を覆うフィルムから構成されている。(図 2)このパラフォイルの最高揚抗比は風洞試験において6 程度と高い性能を示している。この理由としては抗力源の除去だけでなく、部分密閉型パラフォイルの構造が翼断面形状を維持しやすい形状にあるため、翼の空力特性を十分に発揮できたからである。また、この構造では、インフレータブル構造の桁に強制的にガスを注入することで、パラフォイルを展開させることができるため、低密度環境のため、十分なラム圧を得ることが難しい火星大気内での飛行にも適していると考えている。