Nd-Fe-B異方性HDDR磁粉の磁区構造と減磁過程

摘要

本研究では，磁化過程の異なる3種類のNd-Fe-B異方性HDDR磁粉の減磁過程における磁区構造変化を，Kerr効果顕微鏡を用いて観察した。その結果，減磁が開始した磁界強度は，最も高保磁力の磁粉No.1が-3kOe，磁粉No.4が-2kOe，最も低保磁力の磁粉No.6が-1kOeとなり，低保磁力の試料ほど小さな磁界強度で減磁が起こることが，磁区観察の上でも確認された。また，減磁において磁化反転した領域の大きさは，磁粉No.1が約3μm，磁粉No.4が約5μm，磁粉No.6が約10μmであった。これは，低保磁力試料では，結晶粒間の磁気的相互作用が分断されず，保磁力の弱い結晶粒の減磁が周囲に伝播してしまっていると考えられる。これは，個々の磁粉によって粒界組織の均一性にばらつきがある結果を反映したものだと考えられ，減磁曲線の角形を向上させて高(BH)_(max)を得るためには，さらなる結晶組織の均一化が必要だと考えられる。